スイス・フランスを中心にヨーロッパで活動する歌手のDanista。「Remenber Me」という楽曲で、ラヴェルの「水の戯れ」をサンプリングしています。
2017年リリースのアルバム『Ego』収録。
「Remenber Me」以外の楽曲も、音数を絞った涼し気な雰囲気のR&Bトラックが並びます。ビョークやFKAツィッグスをもっとマイルドにした感じ。
そんなアンビエント・ミュージックの要素を含んだクールなアルバム全体のイメージに、見事に「水の戯れ」は馴染んでいます。ラヴェルと同様フランス出身のDanitsaにとって、「水の戯れ」のイメージは共感しやすい物なのかもしれません。
こちらは同アルバム収録の曲「Days」。クラシカルなピアノのアルペジオをフィーチャーしたトラックがカッコいい。
ラヴェルの原曲はこちら。
原題の「Jeux d’eau」を直訳すると「水の戯れ」になるのですが、噴水の事を指す言葉です。この曲はリストのピアノ曲「エステ荘の噴水」から影響を受けて作曲された曲であり、噴水をイメージした楽曲なのです。
なので海や川のような自然に揺蕩う水。というよりは、人工的な美しさを内包した、規則的な水の動きをイメージして聴くのが正解です。
言われてみれば”海”をイメージして聴くよりも、”噴水”をイメージして聴く方がしっくりきます。
リストの「エステ荘の噴水」はこちら。こちらもとても美しい曲です。
ラヴェルの「水の戯れ」は、「エステ荘の噴水」と同様に美しくも、さらに掴み所の無い雰囲気を纏った曲になっています。
ラヴェルと言えば「ボレロ」が有名です。
しかしラヴェルはどちらかというと「水の戯れ」のような、掴み所の無い不思議な雰囲気を持った曲が本領であり、ドビュッシー等と同様”印象主義音楽”に括られる事の多い作曲家です。
「水の戯れ」を聴いて、ラヴェルっぽくない!と感じるのはお門違いなのです。
ただ、ドビュッシー程奇抜ではないその作風は比較的親しみやすく、現代音楽や印象派への入門としてもおススメのラヴェル。
個人的に一番気に入っているのはピアノ協奏曲 ト長調。
モーツァルトのような古典的なクラシック音楽に、印象主義的な要素やジャズ的な要素を混ぜ込んでいます。第1楽章から第3楽章まで退屈せずに聴ける名曲です。
ちなみに、ラヴェルの「水の戯れ」やリストの「エステ荘の噴水」に影響されて作られたと言われているのが、ドビュッシーの「水に映る影」です。
こちらもピアノの音粒が水のように美しくも、冒頭からドビュッシー節全開の曲です。