私が一番好きな作曲家のメンデルスゾーンです。
メンデルスゾーンのクラシックカバーというと「パパパパーン♪」の結婚行進曲が有名ですが、それ意外にはあまりカバーというものはなく、このサイトではあまり紹介できないのが残念です。
結婚行進曲も悪くないんですが、あれはメンデルスゾーンの仮の姿です。あんなのいつもの僕の知ってるメンデルスゾーンじゃない!
という事で、メンデルスゾーンの中でも特に好きな曲を紹介します。
メンデルスゾーンとヴァイオリン協奏曲
メンデルスゾーンといえば、やはり
「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64」
が有名です。オーケストラの何とも言えない切ない和音に合わせてバイオリンがまさに「歌い出す」冒頭部分が超有名ですね。まさにヴァイオリンが主役の協奏曲です。
もう1箇所聴きどころを挙げるとすれば、第1楽章の終盤部分。上の動画でいえば11:30辺りから。穏やかなバイオリンがしばらく続いた後に、オーケストラが冒頭の主題を奏でる後ろ(?)で暴走気味のバイオリンがこれでもかと弾き倒します。
普通のロックやポップスでも、ラストのサビのバックでギターが暴走している曲って結構あると思うんですが、こんな時代からこういう演出ってあるんだなぁと感心します。
例えばこの曲の3:45辺り。
ももいろクローバーZ「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」
マーティ・フリードマンのギターが「ボーカルなんか喰ってやる!!」と言わんばかりに分かりやすく大暴走しております。
またメンデルスゾーンはもう1曲ヴァイオリン協奏曲を書いています。「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 MWV.03」です。この曲も、「Op.64」に負けないくらい良いんです。
第1楽章も印象的な主題でいいんですが、この曲は特に第3楽章。リズミカルでメロディアスな輪舞曲風の曲で、優雅で且つメロディアスな旋律を書くメンデルスゾーンの本領が発揮されています。
ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ニ短調 MWV. O4
そんなメンデルスゾーンですが、今回紹介する「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ニ短調 MWV. O4」もあまり知られていない曲ですが、これがまた良い。
演奏動画がありました。
この曲を作曲した当時メンデルスゾーンはなんと13~14歳。モーツァルトに次いで早熟の天才と言われるメンデルスゾーンです。
普通「協奏曲」と言うのはヴァイオリン協奏曲・ピアノ協奏曲・チェロ協奏曲など一つの楽器が主役なのですが、この曲はピアノとヴァイオリンのダブル主役です。
このダブル主役、すごく斬新です。
協奏曲の欠点?というか、ちょっと退屈してしまう部分に主役の楽器がメインになるパートがあります。主役の楽器がとても好きな楽器、とか、メロディが解りやすく美しい、とかであれば良いのですが、そうでなければちょっと一休みのパートになってしまいがちです。
ところがこの曲、終始ピアノとヴァイオリンのバトルが繰り広げられます。
ベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第9番クロイツェル」などヴァイオリン・ソナタでそういった曲調のものはみられますが、ソナタは基本的に1つないし2つの楽器で奏でられるものなので、協奏曲とは趣を異にします。
「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ニ短調 MWV. O4」はオーケストラをバックにピアノとヴァイオリンが交互に奏で合ったり、時にはシンクロしたりしながら進んでいく、さながらツインヴォーカルのバンドのようです。
まさにクラシック界のバービーボーイズ。クラシック界の凛として時雨。
第1楽章はおよそ20分の大曲ですが、上記のような楽器同士のやり取り、また派手で意外な展開、キャッチーなメロディから全く退屈しません。「そろそろ終わりかな?」と思った所に唐突に次の展開が始まります。上記動画で言うと10:30あたりから。
また終盤の両楽器のカデンツァから、オーケストラにバトンタッチする場面も鳥肌モノです。19:00辺りから。カデンツァラストにヴァイオリンが慟哭のような1音を鳴らします。必見。この記事を書くにあたり、久々にCD音源を聴くのではなく演奏を動画で見たのですが、カ、カッコイイ…。何回も見てしまいました。
メンデルスゾーンはヴァイオリンの持つ「哀愁」の魅力を本当に良く解っています。
第2楽章の緩徐楽章も、主役が一人の協奏曲とは雰囲気が違い、聴き応えがあります。
そして輪舞曲風の出だしから自由に展開していく派手でキメの多い第3楽章。劇的です。
この協奏曲、はっきり言ってモーツァルト風です。冒頭の雰囲気やカデンツァへの入り方、終わり方、全体の構成などかなりモーツァルトの協奏曲に影響されている節があります。しかしモーツァルトよりもメンデルスゾーンらしい「哀愁」が更に追加され、展開もより自由で面白くなっており、モーツァルトの協奏曲を更にスケールアップさせたような作りになっています。
全3楽章からなり40分とかなりの大作なのですが、ドラマティックな展開とキャッチーで哀愁有るメロディ、ピアノとヴァイオリンの計算されたやり取りが全く退屈させない素晴らしい曲なのです。
この協奏曲、かなりマイナーな曲なのですが、死ぬまでに一度は生で聴きたい曲の一つです。
でも田舎では演奏されないだろうなぁ。