クラシックで「四季」というとヴィヴァルディが有名ですが、今回紹介するのはハイドンの「四季」です。
こちらはアーノンクール指揮の演奏。リンク先で試聴できます。かなり管楽器の音色が強調されており、厳かというよりも、華やかでカラフルな「四季」を堪能できます。独特な”タメ”を大胆に作るアレンジはとても劇的で盛り上がります。
ハイドンの「四季(Die Jahreszeiten)」は、ハイドンの晩年(1801年、当時69歳)に作曲された、約2時間からなる曲です。イギリスの作家トムソンによる叙事詩《四季》を元にし、スヴィーテン男爵という人が台本製作とプロデュースを行った曲です。春夏秋冬の四つのパートから成ります。
伝統的には”オラトリオ”というのは、聖書を題材にしたキリスト教をベースにした曲を言いましたが、現在はハイドンの《四季》もオラトリオの範疇に入れられます。
ハイドンのオラトリオというと、3大オラトリオの内の一つである「天地創造」が有名ですが、個人的にはテーマも曲調も馴染みやすい「四季」の方がおススメです。壮大な「天地創造」も良いですが…。
ちなみに個人的に「天地創造」で気に入っているのは序盤のレチタティーヴォ「神はまた言われた」。テノールとオケの掛け合いが劇的です。レチタティーヴォ(語りのパート)なのに超カッコいい。↓動画の14:30~です。↓
「四季」に話を戻します。原作の叙事詩《四季》は、最後の冬の季節に旅人が落命するラストとなっていますが、このハイドンの「四季」では厳しい冬を乗り越えて強く生きようと決意する希望溢れる力強い結末となっています。
また哲学的であった原作を大胆に変更し、俗的な内容で平易な文体に変更したと言われるハイドンの「四季」。曲調もオラトリオにしてはポップであり、全体を通して明るい曲調も多く、とても聴きやすいオラトリオです。ハイドンは「詩的ではない」「創作の堕落に他ならない」と大衆受け路線には、かなり不服だったそうですが…。
ヴィヴァルディの「四季」とはまた違った”四季”を楽しめます。
ハイドン「四季」のおススメ曲
全2時間からなる大曲ですが、まずおススメはオープニングの「見るがいい、厳しかりし冬の、いま逃げ去り行くを」。
壮大な序奏で、冬から春へ徐々に変化していく様子を表現した後、満を持してソリストが登場し春の訪れを告げます。
4曲目のアリア「早くも喜びの声高らかに」。
このアリアは、ハイドンの有名な曲、交響曲第94番「驚愕」第2楽章を借用しています。
みんな聴いたことあるあのメロディ。
そしてもう1曲、終盤の冬のパートで演奏される、合唱付きリート「糸車の歌(ころころ、からから)」。厳かでメロディアスな名曲です。
糸車でヴェールを作る歌ですが、糸車を紡ぐ女性の裏腹な心情が激情チックなメロディで表現されています。
この部分は原作の《四季》には無いパートであり、ゴットフリート・アウグスト・ビュルガーの《紡ぎ歌》を借用しているそうです。俗的にアレンジされたハイドンの《四季》を象徴する曲となっています。
他の曲も多彩でキャッチーな曲が並ぶ、ハイドンのオラトリオ「四季」。ハイドンと言えば”交響曲の父”と言われるほど膨大な量の交響曲を作曲した事で有名ですが、個人的には是非とも勧めたいのがこの「四季」です。