2018年にデビュー20周年を迎えたaiko。そんなaikoが2001年にリリースした7枚目のシングルが「初恋」です。
ドラムパターンから考えるとリズムは6/8拍子でしょうか?3連リズムのミディアムバラードです。
何といっても、タイトルにもある“初恋”の瞬間を冒頭のたった2小節(?)で表現していると思われるイントロ。高揚する感情と、突然雷に打たれたように恋に落ちるニュアンスを、解りやすくギターとピアノで表現しています。個人的にキングオブイントロです。
イントロの解釈が間違っていなければ、冒頭の稲妻が走るようなギターの後に登場するピアノのグリッサンドは、”恋に落ちる音(動機)”と捉えることができます。
そんなグリッサンドはサビ前に何度も登場し、主人公が初めて恋に落ちた時の感情が今でも残っており、何度も何度も恋に落ちるように相手の事を想い続けている事が表現されています(多分)。
そのことを裏付けるように、サビでは「想いは絶えず絶えず絶えず」と”絶えることない思い”が何度も強調されており、ラストのサビで「あなたに焦がれる」という歌詞のバックで“恋に落ちる動機”が流れます。
一見、ド直球なタイトルにストレートな曲のバラードの「初恋」ですが、何しろ変な曲です。
というのも、タイトルでもあり曲のテーマでもある“初恋”というワードからは程遠いファンク風のアレンジが施されています。
ファンクといえばいわゆる大人のサウンドであり、”初恋”という言葉の持つ瑞々しさや初々しさとは正反対のイメージの音楽です。
「初恋」収録のアルバム《夏服》にも、「初恋」と同様に管楽器を加えたバンドサウンドのバラード曲「ロージー」がありますが、こちらはロック寄りのアレンジであり、「初恋」とは趣を異にします。
この曲も異様に古臭いキーボードの音色と、オルタナロック風の風変わりなギターが印象的な、一見シンプルな曲に見えてかなり奇妙な曲です。サビのギターとか相当変です。サビメロなんてドレミファソラシドなのに。
「初恋」に話を戻しますが、ファンク風のアレンジにしている事によってかなり違和感のある曲調に仕上がっていますが、それが独特な雰囲気を出しておりそれが魅力でもあります。
また”初恋”というテーマとファンク・ミュージックを合わせている事で、曲の解釈も広がっていきます。
①:打算や理性による恋愛ではない、”初恋”の衝動的なさまや本能に赴く感情をファンクの音で表現している
②:大人と子どもの境目である思春期のアンビバレンスを、大人っぽいファンクミュージックと、対照的な可愛らしい歌詞や歌声・ピアノを混ぜ合わせる事で表現している
③:「大人になってから昔の初恋を思い出す」というシチュエーションを表現するために、バックはファンクのアレンジを用いている
④:女性であるaiko側を表現しているのが歌声&ピアノで、男性である恋人側を表現しているのがファンクサウンド&雄々しいギターであるという解釈
等々。「初恋」リリースの2001年はまさに宇多田ヒカルが天下を取っていた時期でもあり、aikoなりにブラック・ミュージックを取り入れた結果のファンクバラード、とも考えられます。
皆さんはどう思いますか?
「初恋」も収録のシングルコレクション。
追記
先日こんな記事を見かけました。下世話ですが興味深い考察です。
ファンクというのは、一般的に直球で性的なテーマを扱う曲が多く、まさにファンクサウンドを取り入れている事に対する整合性が取れます。
また、曲全体がいわゆるアレをテーマにしていると仮定すると、徐々に高まるメロディがピークに達した瞬間に雷に打たれるようなギターが鳴り響き、一気にオチるグリッサンドが流れるイントロは、いわゆるアノ瞬間を表現していると捉える事ができます。
トンデモ解釈とは言い切れない、アリ寄りの説と思われます。