今回紹介するクラシックカバーアルバムは、DOLCE OATIの「CLASSIC×PUNK!!!」です。タイトル通り、「クラシック×パンク」がコンセプト。
2011年リリース。リンク先で視聴できます。
ジャケット写真は本アルバムのアーティストである「DOLCE OATI」だそうですが、おそらく名前と顔を貸しただけと思われる板尾創路。
アーティスト名の”DOLCE”は「柔和に」を意味する音楽記号。”OATI”はひっくり返すと”ITAO”になる。
2:20~ダイジェストが流れます。
曲目
“青色◎”は特に気に入った曲。
1. G線上のアリア(バッハ)
2. 結婚行進曲(メンデルスゾーン)
3. 悲愴(ベートーヴェン)
4. ◎ジュピター(ホルスト)
5. 威風堂々(エルガー)
6. 別れの曲(ショパン)
7. ジムノペディ(サティ)
8. ◎愛のあいさつ(エルガー)
9. トゥーランドット(プッチーニ)
10. ◎愛の夢(リスト)
1. G線上のアリア(バッハ)
有名なフレーズのイントロから始まるザ・パンクな曲。ボーカルは気だるい女性ヴォーカル。コーラス係がユニゾンしており、PUFFYみたいな雰囲気。歌詞は全編英詞。
奇をてらわないパンクアレンジでG線上のアリアを歌い上げる。
ヴォーカルはクレジットを見ると「Asumi Asaya」とあるが、検索してもさっぱり出てこない。よしもとグループのレーベルからの発売である本作。エライ人の娘とか?それともあえてその辺の女子を連れてきた?ちなみにコーラスはちゃんとプロの的野祥子。
2. 結婚行進曲(メンデルスゾーン)
ニュース番組等の結婚ニュースで度々耳にする結婚行進曲のパンクバージョンはこの曲。やはり吉本レーベルはTVで使いやすいのだろうか…。といらぬ邪推をしてしまう。
パンクだしこんなものなのかもしれないけれど、ちょっとリズム走りすぎじゃない?結婚に先走る前のめりな女子の心情を音楽で表現しているのだろうか。まだプロポーズもしてないのにゼ○シィ買ってくるみたいな。
間奏でワーグナーの結婚行進曲が唐突に登場するが、この曲展開はQ;indiviが先にやっており、後追いアイディア。しかも、なんと収録曲までQ;indiviの「Celebration」と10曲中8曲がかぶっている。いくらベタな選曲とは言えやりすぎ。
3. 悲愴(ベートーヴェン)
ポップなメロディがパンクに良く馴染んでいる。クラシックのシンプルで予測を裏切らない優等生メロディは、案外パンクと相性が良い。
パンクなのでテンポは軒並み速いが、ドラムパターンが裏打ち連打の曲と、ゆっくり(これは2ビートで良いのかな?)の曲がほど良い塩梅で混ざっているのでそこまで疲れずに聴ける。この曲は後者。
4. ジュピター(ホルスト)
これもメロディが良く音に合っている。イントロは3拍子なのにすぐ4拍子になる。
木星を4拍子にするアイディアは平原綾香の後追い。ここらでそのまま原曲通り3拍子の曲でも入れておけば良いアクセントになるだろうに…。音もメロディも悪くないけれど、そういう所がことごとく2番煎じ。
パンク風のクラシカルなギターソロというのはネオクラ系とは一味違って新鮮。
5. 威風堂々(エルガー)
まぁパンクだからそんなものなのかもしれないけれど、曲調が一辺倒でそろそろ退屈してくる。程よくクラシカルなギタープレイには時々ハッとさせられるけれど、その他は取り立てて聴きどころはない印象。
ちなみに編曲は全曲桑原大輔という方。福岡で主に活動している方のようです。
6. 別れの曲(ショパン)
他の曲に比べると、うまくメロディが乗りきれていない印象の曲。盛り上がりにも欠ける。かといって一段落するような落ち着いた曲調ではなく、冒頭以外は別れの曲でも爆走一辺倒。”別れの曲”とはいえ、青春パンクによくある卒業ソングのような雰囲気が出ているわけでもない。
この選曲は自分でしたのだろうか。自分で考えれば、ショパンでパンクをするとなるとノクターンとか他にも有名でパンクアレンジに合いそうな曲があるような…。やっぱりQ;indiviを意識しているのだろうか。
7. ジムノペディ(サティ)
比較的スローテンポのアレンジ。曲順の配置的にも少し落ち着く曲で悪くない。
8. 愛のあいさつ(エルガー)
やっぱり愛の挨拶のメロディはJポップに合う。SHAKALABBITSの曲と言われても違和感無いくらい馴染んでいる。
9. トゥーランドット(プッチーニ)
スカ風のリズムでギターが刻み、ドラムのリズムも少し凝っていて曲全体にちゃんとドラマ性をもたせようとしている曲。
ネッスンドルマの譜割りをきちんとした4拍子に改変するか、原曲を尊重するかでクラシックに対するリスペクトの有無が測れるような気がする。サラ・ブライトマンと平原綾香と藤澤ノリマサと本田美奈子.は原曲尊重派。Q;indiviとDOLCE OATIは改造派。
10. 愛の夢(リスト)
明るく終わるザ・パンクの最終曲と言った感じ。
1曲目の冒頭と同じ音のギター(F#)で始まり、最後の最後にアルバムの冒頭を想起させるエモーショナルなイントロがとても良い。不協和音気味の歌メロやポエトリー・リーディングで終わるアウトロも面白い。他の曲ももっと選曲含めオリジナリティを出して欲しかった…。
総評
ほとんどが3分台で終わるシンプルなパンクアレンジのクラシック曲が並び、一辺倒の曲調ですがそこまで飽きずに聴けます。何よりクラシックのJパンクアレンジというのが大変貴重です。とても新鮮でした。
「クラシック×パンク」と言うワードにビビっと来た人は期待通りの曲が聴けるはず。しかしパンクアレンジ、という以外は既存のアルバムやアーティストのクラシックカバーをなぞったカバーであり、じっくり聴き込めるアルバムではありません。学園祭のBGMとかにどうでしょう。今時の若者はこんな音楽聴かないでしょうか?
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