その他編

King Gnu「白日」 サビでの転調に関する考察

日本のミクスチャーバンドKing Gnuの出世作「白日」。ミクスチャーロックにブラックミュージックとJPOPの要素を加えて大ヒットしました。

今回はこの曲を、コード進行と歌詞からちょっとした分析的な事をしてみます。

 

この曲、おそらくBメロが変ロ短調サビが変ニ長調で平行調に転調しているものと思われます。

しかしコード進行を見ると、BメロもサビもB♭mを起点に進行しておりあまり変わりがありません。

それにも関わらず、サビでメインのヴォーカルは切り替わり、歌メロも平行調に転調しているようなメロディラインになって音程も大きく上がり、リズムも裏ノリが強くなります。それらが合わさった結果、サビで転調してるのかしてないのかよく判らなくなります。しかしそれがこの曲の魅力の一つでもあります。

 

Bメロとサビの繋ぎのコードを見ると、A♭(変ニ長調のⅤ)⇒F7(変ロ短調のⅤ7)となっており、その後のサビ頭はB♭m(変ロ短調のⅠ)に繋がります。

盛り上げ役のⅤから、更に転調先の盛り上げ役であるⅤ7にバトンタッチし、そこから転調後の王道パターンであるⅠに着地する進行はドラマティックです。転調を違和感のないようにしつつも、大きく盛り上げるよう演出しています。

 

平行調への転調というのは、転調してはいますが、使用している音符の種類は同じであり違和感が少ない転調です。それに加えて「白日」ではコード進行にも大きな変化がないので和声的には小さな変化となります。

(変ロ短調&変ニ長調の調号。どちらも同じ部分に♭が付き、同じ鍵盤を使用します。)

 

しかしその一方で、ヴォーカルのスイッチやリズムの変更によりサビではしっかりと変化を付けています。

 

という事で、様々な仕掛けにより「変わったものも多いけれど、変わらないものも多い」という表現が成されている「白日」のサビ。

 

そして、そんな曲展開に乗っかる歌詞が、「真っ新に生まれ変わって 人生一から始めようが へばりついて離れない 地続きの今を歩いているんだ」なのです。

そんな歌詞に同調するように、《転調し歌い手もリズムも変わり、メロディも大きく跳躍したけれど、実際には根本的な音符や和音は変わっておらず、本質はそのままである》というメッセージが音符により表現されています。

裏を返せば《「真っ新に生まれ変わって」と歌ってはいるけれど、実際には過去を捨てきる事はできておらず、未だ引きずったままである》と言い換える事もできます。

またサビ直前の歌詞は「その頃にはきっと 春風も吹くだろう」となっており、その後明るい雰囲気である長調に転調する様は、春の到来を暗示するものとなっています。

 

「白日」はラストのサビで更に半音上がった転調をします。これは曲を盛り上げるために有りがちなJPOPの方法論を取り入れただけとも考えられますが、

上記のような視点で全体像を眺めると、最後の最後で平行調の転調からさらに変化する事で、もう一段決意が強まり更に前向きになった主人公の心情を表現している、とも考えられます。

 

 

 

“人生完全にリセットはできないけれど、過去を引きずりながらも自分なりに変化して前進し続けるしかない”というメッセージを歌う「白日」。

見事に音符と歌詞がシナジーしています。良い曲。
2019年リリース。

 

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1984年生まれ。生まれも育ちも長崎市です。 2人の子育てが大変なので、夜中にちまちま記事を書き通勤中と昼休みに曲を聴く日々。 趣味はインドア全般。音楽以外では辛麺と洗濯とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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