今回紹介するのはスコットランドのプログレッシヴロックバンド、Beggar’s Opera(ベガーズ・オペラ)の楽曲。アルバム『Act One』にて、多数のクラシック曲を使用しています。
1970年リリースの1stアルバム。ほぼELPと同時期のデビューで曲調もELP(The Nice)系列ですが、ELPよりも単純明快で疾走感があります。明らかにプログレなのに全然小難しくない。頭を空っぽにしてもノリで聴けます。ライブも楽しそう。ちなみに『展覧会の絵』のリリースよりもこっちの方がちょっと早い。
まずはアルバム一曲目の「Poet and Peasant」。オーストリアの作曲家スッペによるオペレッタ《詩人と農夫》の序曲。
原曲はこちら。スッペの作品の中では割と有名な曲です。引用しているのは冒頭ではなく、こちらの動画の4:00~の部分。超劇的でカッコいいです。よくぞこの曲を使ってくれました。
そして本アルバムのハイライトである4曲目「Raymonds Road」。モーツァルトの「トルコ行進曲」、バッハの「トッカータとフーガ」、ロッシーニの「ウイリアムテル序曲」、シベリウスの「カレリア」、グリーグの「山の魔王の宮殿にて」のメロディを次から次へと繰り出します。
これがまた単なるメドレーではなく、オリジナルの展開を十分に挟みながらひたすらに疾走する12分の楽曲。熱量が凄い。まったく休まずにドタバタ叩き続けるドラムも凄い。
バッハは有名なトッカータの部分ではなくフーガの部分。
シベリウスのカレリアはこちら。全3曲のうち第1曲「間奏曲」を使用。ちなみにThe Niceもこの曲をカバーしています。
そして「Light Cavalry」。スッペのオペレッタ《軽騎兵》序曲を大胆にプログレにアレンジ。
同アルバムの他の曲も「パッサカリア」「サラバンド」など、いかにもクラシックな曲名です。前者はバッハっぽい気もするけど…。
とにかくクラシック×プログレという如何にもインテリジェンスな組み合わせで大曲も多いのに、全然小難しくない本作。
バンド名は訳すると「乞食のオペラ」となり、同名の作品から借用しているようです。自虐的なバンド名にも見えますが、その音楽性まで見ると、なるほど信念を持って明朗快活なプログレクラシックを演っているんだなぁと感心します。
70年の作品にしては演奏も悪くなく、バンドの地力の高さも伺えます。プログレ入門にもおススメです。