18世紀イタリアの作曲家、ペルゴレージが作曲したオペラ「奥様女中」。
シンプルでキャッチーなメロディにコミカルな演技、美しい伴奏。
チェンバロの音色や、ヴィヴァルディのようなストリングスはバロック音楽的な雰囲気を出しながらも、古典派音楽の華やかさも兼ね備えています。
また、バロック時代のオラトリオやオペラに特徴的な、語りのパート(レチタティーヴォ)を挟みながら物語が展開していく様子は、今で言えば、ディズニー音楽やSound Horizon的てもあります。
ペルゴレージはバロック音楽と古典派音楽の過渡期の作曲家として有名であり、バロック音楽と古典派音楽の雰囲気を併せ持った作風の作曲家です。
こちらは第1部の曲、「Stizzoso, mio stizzoso」。主人公であるウベルトを、女中のセルピーナが宥める場面。とてもコミカルなアリアです。
オペラというと、プッチーニやヴェルディ・ワーグナーなどロマン派の作品が著名ですが、ロマン派のオペラはどちらかというと歌手の歌声を見せつけるようなアリアが多いです。またメロディやオーケストラの伴奏は控えめな事も多く、個人的には聴いていてやや退屈に感じます。
一方『奥様女中』はシンプルでキャッチーなメロディを聴かせるパートも多く、オーケストラによる伴奏もシンプルながら美しい、聴くだけでも楽しいオペラになっています。
『奥様女中』の大まかなストーリーは、女中(メイド)のセルピーナが主人のウベルトと結婚するべく画策する、というものです。
このような庶民的なテーマを扱ったオペラを“オペラ・ブッファ”と呼び、モーツァルトの『フィガロの結婚』等も”オペラ・ブッファ”になります。
当時のオペラは古典派やロマン派の時代とは異なり、登場人物が少なくオーケストラ編成も小規模です。『奥様女中』に至っては、登場人物はほぼ2人。
また『奥様女中』は本来『誇り高き囚人』という、王族をテーマにした高貴な長編オペラの間に上演される”幕間劇”として制作された物です。そのため上演時間は40分程度と短めで、息抜き的な役割も担っていたものと思われます。
そのためストーリーや壮大さよりも、メロディの美しさや馴染みやすさにおいて優れているように感じます。“芸術よりも娯楽”のオペラです。
ペルゴレージは宗教音楽である『スターバト・マーテル』でも有名です。
また、こちらの記事で紹介している、ストラヴィンスキーの『プルチネルラ』もペルゴレージの楽曲がベースにあると言われています。