今回紹介するのは、イタリアのプログレッシブ・ロックバンドOpus Avantra(オパス・アヴァントラ) が1974年にリリースしたアルバム、「内省(Introspezione)」です。
リンク先で全曲試聴できます。
古風な室内楽アンサンブルによる、美しくも前衛的で薄気味悪いサウンド。女性ヴォーカルによる、朗読と歌を混ぜたような独特な歌唱。そしてコロコロ変わるテンポや曲調。
それらが合わさり、オンリーワンの世界観を作り上げています。正真正銘、本当にオンリーワンです。
そして、突飛な曲の中に時折挿入されるシンプルな曲がとても感動的です。アルバム中盤の「Il Pavone」は特に素晴らしい名曲。是非アルバムの流れで聴いてほしいです。歌詞なんて全然解らないのに泣けます。
その作風はプログレッシブ・ロックというよりも、バロック音楽と現代音楽の融合といった感じです。
クラシック音楽で一番近いと感じるのは、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」。
少人数の器楽演奏と独特な歌唱で、独自の世界観を作り出しています。月の持つ”狂気”の側面を音楽で表現している、とても面白い作品です。
Opus Avantraよりも更に聴き手を突き放すような前衛的な曲調ですが、独自の魅力があります。
こちらは2ndアルバム、『クロムウェル卿の奏する7つの大罪の為の組曲(Lord Cromwell Plays Suite for Seven Vices)』。
ジャケット含め、解りやすく前衛に振り切っています。正直アルバム全体はイマイチな出来ですが、1曲目の「自惚れに咲く花(Frower on Pride)」が最高レベルに気味の悪い名曲です。お上品な室内楽パートから突然始まる、今までの雰囲気がウソのような不気味な合唱パート。そして何もなかったかのように元の曲調に戻る展開。全てが不気味で美しい。
このOpus Avantra、なんと2019年、新作が出ました。しかも当時の路線の延長線上にある作風。
「薔薇の花(Rosa rosae)」。以前の作品よりも音の迫力が増しており、めちゃかっこいいです。しかもイタリア風のアレンジも増えており、スピード感が増しています。情熱的かつ前衛的。ピアノの音色が今風ですが、ビックリな曲展開も健在です。
プログレッシブ・ロックと現代音楽の中間のようなバンドのOpus Avantra。どちらかしか知らない方は、是非このバンドを架け橋として、もう一方のジャンルにも踏み出してみてはいかがでしょうか。
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