今回紹介するクラシックカバーアルバムは、ヨーロッパやロシアで活動する、イギリスの歌手Marina Laslo(マリーナ・ラスロ)のアルバム「classic revolution」です。シンプルながらもポップ色強めなクラシカル・クロスオーヴァー。
2009年リリース。
曲目
青色◎は特によかった曲。
1.Ave Maria(J.S.バッハ/グノー:アヴェ・マリア)
2.◎Lacrimosa(モーツァルト:ラクリモーサ(レクィエム から))
3.◎Voi Che Sapete(モーツァルト:恋とはどんなものかしら(オペラ「フィガロの結婚」から)
4.◎Caruso(ダッラ:カルーソー)
5.Barcarolle(オッフェンバック:舟歌(オペラ「ホフマン物語」から))
6.◎Aria(ヴィラ=ロボス:アリア(ブラジル風バッハ第5番 から))
7.Aria Di Rodelinda(ヘンデル:ロデリンダのアリア(「オペラ「ロデリンダ」から))
8.Casta Diva(ベッリーニ:清らかな女神よ(オペラ「ノルマ」から))
9.◎Moon River(マンシーニ:ムーン・リヴァー)
10.Pavane(フォーレ:パヴァーヌ)
11.Suo-Gan(伝承曲:ウェールズ地方の子守歌[Suo-Gan])
12.Ebben? Ne Andro Lontana(カタラーニ:遠くへ行かないで(オペラ「ワリー」から))
13.Only You(ヴィンス・クラーク:オンリー・ユー)
14.The Swan(サン=サーンス:白鳥(「動物の謝肉祭」から)
1.Ave Maria(J.S.バッハ/グノー:アヴェ・マリア)
グノーのアヴェマリアをシンプルにテクノアレンジした曲。サラ・ブライトマンのHaremみたいな感じ。ヴォーカルはシンプルな高音で可もなく不可もなく。2分半程度であっさり終わる。
所々にフィルイン的に登場するコロラトゥーラ風の音(シンセ?加工音声?)が印象的。
2.◎Lacrimosa(モーツァルト:ラクリモーサ(レクィエム から))
クラシックギターを加え独唱でカバーする「涙の日」。この手のクラシック・クロスオーヴァー歌手は押し並べて「穏やか」「癒し」を前面に出してくる傾向にあるため、暗い印象の強いこの選曲は新鮮。シンプルなカバーだけど悪くない。
3.◎Voi Che Sapete(モーツァルト:恋とはどんなものかしら(オペラ「フィガロの結婚」から)
古臭い打ち込みアレンジでフィガロの結婚のアリアをカバー。新しい事をしようとする気概は伝わる。実際新鮮。
しかし、いかんせん打ち込みサウンドがチープ。例えば初期のlove solfegeもこんな作風だったけど、あれは同人音楽だったからこそあの音が合っていたわけで、本格感のあるプロの歌手でこんなアレンジをされるとちょっと。クラシック好きにも評判悪そう。
でもなんだかんだ言って個人的には好み。
4.◎Caruso(ダッラ:カルーソー)
原曲はイタリアのシンガーソングライターの曲。有名なテノール歌手エンリコ・カルーソーを題材にしており、良くテノール歌手にカバーされるらしい。
派手目なオーケストラアレンジと、ブルージーな歌唱で聴かせるカバー。ヘタにソプラノで歌うよりこっちの歌唱の方がだいぶ上手い気がする。無理して高音出さなくても…。
所々テノールコーラスも入り、デュエット風のアレンジ。
5.Barcarolle(オッフェンバック:舟歌(オペラ「ホフマン物語」から))
「ホフマン物語」のバルカローレを、大胆に南国風にカバー。原曲の6/8拍子のリズムもより強調され、原曲を大きくアレンジ。アイディアはとても面白いけど、やはりいかんせん音とアレンジがチープ。本格風な高音ヴォーカルとの相性が悪い。
6.◎Aria(ヴィラ=ロボス:アリア(ブラジル風バッハ第5番 から))
ブラジル風バッハのアリアをシアトリカルなアレンジでカバー。裏箔を強調した踊れるアリアになっている。これは原曲の雰囲気をガラリと変えていながらも、チープさをあまり感じない良カバー。
7.Aria Di Rodelinda(ヘンデル:ロデリンダのアリア(「オペラ「ロデリンダ」から))
安っぽいパンフルートと安っぽい打ち込みの脱力イントロから本格ソプラノが登場する2重に脱力する曲。ホント初期のlove solfegeみたい。なんだか中毒性がある。嫌いじゃないけど…。
8.Casta Diva(ベッリーニ:清らかな女神よ(オペラ「ノルマ」から))
シンプルな打ち込みアレンジのスローテンポな曲。マリーナ・ラスロのソプラノを披露するための曲といった感じ。高音も良く出ている。
9.◎Moon River(マンシーニ:ムーン・リヴァー)
原曲は映画「ティファニーで朝食を」でオードリーヘップバーンが歌った曲。アコースティックアレンジと穏やかな歌唱で聴かせるカバー。高音歌唱もいいけど、普通に歌った方が断然味があって魅力的。
10.Pavane(フォーレ:パヴァーヌ)
原曲をなぞりつつも、打ち込みアレンジを施しヴォカリーズでカバーしたパヴァーヌ。この”シュイーン””ポコポコ”と鳴る効果音は必要なんだろうか。”打ち込みでパヴァーヌをアレンジ”という発想自体は悪くないと思うけど…。
11.Suo-Gan(伝承曲:ウェールズ地方の子守歌[Suo-Gan])
子守唄を穏やかなポップス風にアレンジ。
このアルバム全体に漂うシンプルでチープなアレンジは、伝承曲のカバーにはとても合っている。程よく子どもっぽい雰囲気がかなりいい感じ。
12.Ebben? Ne Andro Lontana(カタラーニ:遠くへ行かないで(オペラ「ワリー」から))
壮大なストリングス&打ち込みアレンジ。ここにきてスタンダードなクロスオーヴァーに近い曲調が登場。
13.Only You(ヴィンス・クラーク:オンリー・ユー)
原曲は元デペッシュ・モードの人の曲。歌を邪魔しない程度のシンプルな打ち込みアレンジ。しかし原曲が元デペッシュ・モードなわけで、ヘタな打ち込みアレンジは到底原曲にはかなわず、正直劣化コピー。
14.The Swan(サン=サーンス:白鳥(「動物の謝肉祭」から)
ラスト3曲は同じような曲調。正直退屈。どうせならもっと弾けてほしい。
総評
思い切った打ち込みアレンジのカバー曲など、「classic revolution」の名に相応しい意欲的な試みが見られます。アレンジはシンプルで単調さも目立ちますが、かなりポップです。
選曲も新旧混じっており、定番あり意外な曲ありと、かなり良い感じです。
全14曲ですが2分台、3分台の曲も多くサラリと聴けます。合間に入る非クラシックのカバー曲も良いアクセントになっています。
本格歌唱とチープなアレンジのギャップが強いですが、それも含めて楽しむのが吉です。
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