ホルスト

組曲《惑星》より「木星」/吉岡聖恵「World In Union」

いきものがかりのヴォーカルである吉岡聖恵(よしおか きよえ)。バンドの放牧(活動休止)中にリリースした、ソロのカバーアルバム「うたいろ」の中の1曲、「World In Union(ワールドインユニオン)」はホルストの「木星」のカバーとなっています。

2019年の秋に日本で開催される、ラグビーワールドカップ2019の公式テーマソングです。

2018年リリース。

 

この「World In Union」という曲は、ラグビーW杯のテーマ曲として、毎回W杯が開催されるたびに世界中の様々なアーティストにカバーされている曲です。

 

こちらは2007年フランスW杯の「World in Union」。キャサリン・ジェンキンスやヘイリーなど、著名な歌手が多数参加しています。

 

 

こちらは原曲の、組曲《惑星》の中の1曲「木星(ジュピター)-快楽をもたらすもの」

引用されている部分は3:00~から始まる中間の部分です。平原綾香がカバーしたのも中間部ですが、その前後もドラマ性とファンタジー感、勇ましさを内包する派手な曲です。聴いたことない方は、ぜひ最初から通して聴いてみましょう。

 

 

ジュピター(jupiter)の歴史

この“木星の中間部の部分に歌詞を付けて歌う”というのは、元を辿ると第1次世界大戦の時期に遡ります。当時のイギリスの愛国歌として制作された「我は汝に問う、わが祖国よ(I vow to thee, my country)」です。ホルスト自身が編曲しています。

イギリスでは、毎年第1次世界大戦の終戦記念日である11月11日に、戦死者を追悼する際に歌われるそうです。ダイアナ妃の結婚式や、サッチャー英首相の葬儀でも演奏された国民的な歌です。

 

その後、この“木星の中間部の部分に歌詞を付けて歌う”歌は、「サクステッド(Thaxted))と名付けられ、様々な歌詞が付けられ讃美歌として歌われるようになりました。

 

そして1991年、ラグビーW杯イングランド大会で初めて「World In Union」がテーマソングとして使用され、その後W杯が開催される度に、形を変えて歌われるようになったのです。

原曲の「木星」及び讃美歌「サクステッド」は3拍子の歌ですが、「World In Union」は4拍子に変わっており馴染みやすくノリの良いリズムになっています。歌詞も題名の通り、世界の団結及び平和を願うものとなっています。

 

私たち日本人にとって“木星の中間部の部分に歌詞を付け、4拍子にして歌う”スタイルと言えば平原綾香の「jupiter」が有名ですが、その歴史を辿ると様々な先人がいるのです。

 

 

イギリスで、大戦当時「今」のために歌われ、その後は「過去」を振り返ると共に「未来」平和を願う曲として歌い継がれる『木星』。吉岡聖恵の「World In Union」及び平原綾香の「jupiter」も、その長い歴史に倣い、”未来”をテーマにした壮大な曲になっています。

 

こちらは「jupiter」収録の平原綾香のクラシックカバーアルバムの記事です。

平原綾香「my Classics!」平原綾香のクラシックカバーアルバム第1弾。2009年リリース。 リンク先で視聴できます。 曲目 "青色◎"は特に良かった曲。 ...

【夜】をテーマにしたコンセプトアルバム。アルバムラストの「jupiter」で『夜明け』を明るい未来になぞらえて表現しています。合わせてご一読ください。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。