韓国の4人組女性グループBrown Eyed Girls(ブラウン・アイド・ガールズ)。「Sixth Sense」という楽曲で、ショスタコーヴィチの交響曲第7番《レニングラード》をサンプリングしています。
2011年の4thフルアルバム『Sixth Sense』表題曲。リンクはベストアルバム。
「Sixth Sense」は彼女たちの代表曲の一つです。終盤でパワフルなロングトーン&ホイッスルボイスを披露しており、実力のあるグループである事が伺えます。作曲は彼女達の代表曲の多くを手掛けるイ・ミンス。
サンプリング部分はこの動画の1:05:00~の部分。第4楽章の前半にあたります。
原曲とはリズムを変えており、初め聴いたとき、これは引用では無いかな?と思いましたが、MVを見て確信しました。これは間違いなくレニングラードのサンプリング。
MVに登場する仮想の敵国は、旗に記されている”赤&☆”のモチーフから、共産主義国家である事が解ります(MVでは六角星ですが、一つの角だけ色が違います。曲タイトルの第六感を表現しつつ、それと同時に五角星を暗示しているものと思われます)。
また一人の独裁者が登場し軍隊を指揮しています。
そんな共産主義国家にBrown Eyed Girlsの皆さんは対峙し、最終的にはクーデターへと導くストーリーとなっています。
《レニングラード》はこちらの記事で詳しく解説していますが、“共産主義””全体主義””軍歌的交響曲”の象徴のような楽曲です。「Six Sense」のMVでは、そんな《レニングラード》の旋律を、軍隊の人たちが弦楽器で演奏する場面もみられます。
そんな《レニングラード》をサンプリングしたシリアスなヴァースから、オリジナルの明るいディスコ調へ劇的に展開するサビは、いわゆる”抑圧からの解放”を示唆しています。
楽曲が《レニングラード》をサンプリングしたイントロで始まり、ラストサビの後は《レニングラード》には戻らずそのままオリジナルのアウトロで終わるのも、つまりはそういう事でしょう。改革は終了し、元には戻らないという事です。
そんな曲調に合わせるように、MVでもラストのサビの部分で軍隊がクーデターを起こします。
歌詞は男女の関係をモチーフにしつつ、”この音楽で新しい体験をしましょう””あなたと感情を分かち合いたい”といった内容のようで、凝り固まった感性を持つ相手に対して、新しい価値観・自由と解放・そして融和を呼びかけるものとなっています。
という事で、普通に捉えればこの程度の解釈になるのですが、重要なのは、この曲を歌っているのが韓国のアーティストであるという事。大変強い政治的メッセージ性を帯びる事になります。
韓国人が共産主義の独裁国家に対峙し、自由と解放・そして融和を呼びかけ、最後はクーデターを扇動する。というのはつまり……
ちなみにこの曲のMVはビヨンセの「Run the World(Girls)」に類似しているとの問題が指摘されているそうですが、ぶっちゃけて言ってしまうとサンプリング内容や楽曲コンセプトもPeter Foxの「Alles Neu」とそっくりですね。