ラモー

『新クラヴサン組曲集 第1番(第4組曲)』より「ガヴォットと6つのドゥーブル(変奏)」/Rah Digga「Curtains」

アメリカのラッパーRah Digga。彼女の楽曲「Curtains」は、バロック時代のフランスの作曲家、ジャン=フィリップ・ラモー「ガヴォットと6つのドゥーブル(変奏)」をサンプリングしています。


2000年の1stアルバム『Dirty Harriet』収録。Busta Rhymesと親交があり、この曲も彼によるプロデュース。

 

ラモーはクラシックの中でもかなり古い時代の作曲家であり、今でいうコード進行の基礎を提唱した音楽家としても知られています。いわゆるトニック⇒サブドミナント⇒ドミナント⇒トニックという今では基本中の基本の和音進行を、和音進行のお約束として初めて提示した人物であると言われています。

Rah Diggaの「Curtains」のベースライン(根音進行)はド♯ミ♯レ ソ♯ソ♯(オク下)ド となっています。
この根音進行もまたⅠⅢⅡⅤⅤⅠとなり、トニック⇒サブドミナント⇒ドミナント⇒トニックと、ラモーが示したカデンツの法則通りの進行となります。

後半のソ♯(オク下)⇒ドの4度上行が強進行で一番グッとくる所ですが、その根音進行に乗るチェンバロのメロディはド⇒ド♯となっており、嬰ハ短調の自然的短音階には無いドが登場します(和声的短音階=ハーモニックマイナー)。この組み合わせがエモい!これにより、嬰ハ短調であるにも関わらず導音⇒主音のキレイな流れを作っており、ベースラインの強進行と相まって曲のマイナー感と終止のスッキリ感を両立させています

もう少し詳しく述べると、ハーモニックマイナースケールを用いる事で、曲の主音を強調する事ができるので、終止の解決感(=スッキリ感)と短調の調性感(マイナー感)を強調し、聴き手に印象付ける事ができます。また、導音(不安定)⇒主音(安心)の流れを作る事で、緊張と緩和(=エモさ)を作り出しています。

これを嬰ハ短調の自然的短音階通りにシ⇒ド♯としていまうと、違和感はありませんがスッキリ感とエモさが減退していまいます。

このカデンツ×ハーモニックマイナーは今となっては音楽の基本中の基本ですが、ラモーが活躍したバロック時代らしさを象徴する音使いでもあります。

色々結構適当に書いてます。間違ってたらゴメンナサイ!!

原曲はこちら。クラヴサンというのは、フランス語でチェンバロの事です。

『新クラヴサン組曲集 第1番』は、ラモーが作曲したクラヴサン組曲の中では4番目にあたるため、第4組曲と呼ばれる事もあります。『新クラヴサン組曲集 第1番』は全部で7曲から成り、その7曲目が今回紹介している「ガヴォットと6つのドゥーブル(変奏)」です。

 

「ガヴォットと6つのドゥーブル(変奏)」は、はじめにガヴォット(舞曲)のメロディが提示され、続いてそのメロディをアレンジした変奏が6種類演奏されます。メロディの形は残しつつもバリエーション豊かなアレンジが施されており、ラストの変奏曲なんかは特に劇的でカッコいいです。

このガヴォット、ピアノで演奏されているものも多いですが、やはりバロック音楽といえばチェンバロ。美しい音色に浸りましょう。

 

Rah Diggaの「Curtains」は、このガヴォットの旋律を効果的にサンプリングにより利用しています。

ループさせているフレーズのラストで、この曲の属音であるソ♯からオクターブ下のソ♯までチェンバロが階段状に降りていきます。これにより変化を付けながら2拍にかけてじっくり属音による惹きを作っていて、聴き手の期待を高めています。

 

ちなみにラモーの新クラヴサン組曲の中で私が好きな曲は
第1番第6曲の「凱旋」

そして第2番第8曲「エジプトの女」。

学生時代、クラシックの事なんてほとんど知らなかった私ですが、NHK-FMラジオ番組の「あさのバロック」という番組を早朝にウトウトしながら聴くのが何故か大好きで、とても幸せなひと時でした。中でも私が一番好きだったのは、バッハでもヴィヴァルディでもなくラモーでした。

そんな私にとってバロック音楽、チェンバロを初めとした古楽器の音色、そしてラモーのメロディは青春そのものなのです。

 

中でも一番好きなのは歌劇《ダルダニュス》の中の一曲「タンブラン」。予定調和なカデンツを繰り返しながら、ちょっと意外な転調で魅せる軽快な曲。後ろでドンドン鳴っているのがタンブランと呼ばれる太鼓です。

 

ABOUT ME
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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