モーツァルト

オペラ≪魔笛≫より「夜の女王のアリア」/NIGHTWISH「Passion and the opera」

フィンランドのシンフォニックメタルバンドNIGHTWISH(ナイトウィッシュ)。オーケストレーションとオペラティックな女性ヴォーカルを前面に出したその音楽性は、多くのアーティストに影響を与えています。

そんなNIGHTWISHの出世作である1998年リリースの2ndアルバム「Oceanborn」。その中に収録されている曲「passion and opera」でモーツァルトのオペラ《魔笛》の「夜の女王のアリア」を引用しています。

 

「passion and the opera」MV。

引用部分は2:20~の部分。

 

原曲の夜の女王のアリア 「復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え」。

原曲の有名な部分と同様の発声(スタッカート・コロラトゥーラ)を「passion and opera」でもしています。

オペラのアリアというと、ともすれば歌い手の高音を披露するだけの退屈なものになりがちですが、この「夜の女王のアリア」はしっかりメロディアスであり、バックのオーケストラも曲を盛り上げつつも歌の邪魔をしない程度に頑張っています。

音楽としてしっかり聴けるオペラ、アリアに仕上がっています。モーツァルトが亡くなる直前に書いた曲であり、モーツァルト音楽の集大成とも言えます。オペラ入門にも良いです。

 

 

「Passion and opera」は曲だけ聴くと「夜の女王のアリア」からの引用かどうかは微妙な所ですが、「passon and opera」という曲名で夜をテーマにしたダークな曲であり、歌詞にも”princess”という単語等が出てくる事を踏まえると「夜の女王のアリア」からの引用であると考えるのが妥当と思われます。

 

《魔笛》は全クラシック・オペラの中でも最も知名度の高いオペラの一つであり、その《魔笛》の中でも「夜の女王のアリア」は一番有名なアリアです。また歌うためには超絶技巧を駆使する必要があり、難易度が高い歌としても有名なこの曲、オペラティックなヴォーカルを売りにしていたNIGHTWISHの本領を披露するのに最適な引用と言えます。

 

ちなみに私は日本盤のCDを持っていたのですが、売ってしまったので手元にありません。ライナーノートには引用について書いてあるのでしょうか?持っている方いれば教えてください…。

 

 

ナイトウィッシュ

NIGHTWISHはシンフォニックメタル界の第1人者とも言えるバンドです。

 

2ndアルバムの「Oceanborn」ではシンセでド派手なオーケストレーションを奏でながら、ボーカルはソプラノのオペラ的な歌唱を披露し個性と個性がぶつかり合うオンリーワンの音楽性を持っており、当時から異彩を放っていました。

「passion and opera」もそんな当時のNIGHTWISHを象徴するかのような1曲です。シンセとバンドサウンドで「ジャジャジャン・ジャン」とキメキメの音を出しまくります。

初期の代表曲「Stargazers」。

3代目ヴォーカルが歌っているのでキーが下がっていますが、当時度肝を抜かれたイントロは健在です。

 

その後シンセストリングスは生オケ風の音へと変化していき、ヴォーカルの交代もあり映画音楽風のマイルドなシンフォニック・メタルへと音楽性も変化していきます。

 

個人的にぶっちぎりでNo.1の曲は、2代目ヴォーカルに交代した後のアルバム「Dark Passion Play」の1曲目「The Poet and the Pendulum」。part1~5から成る、全14分に及ぶ組曲形式の大曲です。

 

ゴタゴタにより辞めてしまった前任ヴォーカルへの恨み節が、これでもかと詰まった怨念あふれる凄い曲になっています。何故かあまりフィーチャーされない曲なのですが、ド派手なオーケストラによるイントロにかっこいい歌メロ、緩徐楽章からの後半の盛り上がり等、組曲として完璧の出来です。

 「The Poet and the Pendulum」も収録の2枚組ベストアルバム。「The Greatest Show On Earth」では、間奏に一部バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」の一部を引用しています。大曲を多く集めたベストアルバム。

 

そして「The Poet and the Pendulum」に対する脱退ヴォーカルのアンサー・ソングとも言えるのがこの曲。モーツァルトのレクイエムを引用しています。

レクイエム/ターヤ・トゥルネン「I Walk Alone」2005年にシンフォニック・メタルバンドNIGHTWISHを脱退し、その後2007年にリリースしたターヤ・トゥルネン(Tarja Tur...

 

 

 

数多くのフォロワーを生み出したNIGHTWISHですが、その中の一組ElupiAは、今回紹介した「passion and opera」と同様に「夜の女王のアリア」を引用した楽曲を発表しています。こちらもクオリティの高い良い曲なので是非ご一聴ください。

オペラ≪魔笛≫より「夜の女王のアリア」/ ElupiA「Sorceress! The Hypnotizing Forest (Third Movement)」日本のシンフォニック・メタルバンドElupiA。 「Sorceress! The Hypnotizing Forest (Thir...

 

またこちらの楽曲は、明確にNIGHTWISHの「passion and opera」をオマージュした楽曲となっています。合わせてどうぞ。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。