ラフマニノフ

ピアノ協奏曲第2番/ゴスペラーズ「Sky High」

アニメ「のだめカンタービレ」の主題歌として2008年にリリースされたゴスペラーズの「Sky High」。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番 第3楽章」をカバーしています。

こちらで一部視聴できます。

所々にポップな雰囲気を見せながら、やはり普通のポップスとは一線を画するメロディが新鮮です。「いつの間にか~♪」と歌う部分で、いつの間にかサビが始まってしまっている所が笑えます

アレンジはポップスにしておきながら、メロディはしっかり原曲を再現しているため全体としての違和感が面白いです。クラシックはアニソンみたいに8小節単位でサビに向けて徐々に盛り上がったりはしません。

サビの締めも、原曲では自然と展開する曲調をそのままカバーしているのに、アニメのOPテーマという先入観のせいで「無理やり畳ませたメロディ」みたいに聞こえてしまうマジックです。とても面白いカバーに仕上がっています。

 

作曲はドラマ「のだめカンタービレ」の音楽も手がけた服部隆之氏です。音楽家一家であり、ドラマ「半沢直樹」「HERO」「真田丸」等数多くの劇伴音楽を担当している大物作曲家です。

ゴスペラーズの「Sky High」はクラシック音楽へのリスペクトが感じられるアレンジ。本来クラシックは原典の楽譜に忠実であるべきなのです。

 

 

 

ラフマニノフの原曲はこちら。

2:00~辺りから引用部である主題が始まります。「のだめカンタービレ」の作中でも重要な使われ方をする曲です。

 

 

今回引用されている部分は第3楽章ですが、第1楽章も良いです。

第1楽章はこちらから。 

暗く重厚な序盤の2分半から、美しいメロディへと展開していきます。

 

ラフマニノフのピアノ協奏曲は、まさに「ピアノが主役」といった感じの協奏曲です。そして旋律は、簡潔に表現すると「キレイ」で「あっさり」しています。調和の取れたメロディだけれど、跳躍も多くそこまでメロディアスではありません。短調曲も、そこまで”情感あふれる”といった感じではありません。

今回引用されている第2番第3楽章は、そんなラフマニノフのピアノ協奏曲でも最もポップなメロディを聴かせる部分と言えます。「ポップスでカバーするならここしかない(ここくらいしか見つからない)!」といった所です。

 

そんなラフマニノフのメロディは、主題歌だったアニメ「のだめカンタービレ」の雰囲気ともとてもマッチしています。

 

「のだめカンタービレ」の主人公の二人は、それぞれ幼少期のトラウマを抱えています。それが人間として、また音楽家としても未熟な要因となっています。

しかし作中ではそのトラウマに関して、驚くほどあっさりとしか触れられません。他の作品なら、きっと時間をかけてじっくりと描写しきっと読者を泣かせに来たでしょう。

 

主人公たちの複雑な人間性やドラマを、あえて情感に訴えずリズミカルであっさりとしたドラマティックさに仕上げている「のだめカンタービレ」の織りなす旋律もまた、ラフマニノフに通じるものがあります。

 

作中に登場する様々なクラシック曲も、全体的に明るくリズミカルな曲が並びます。既存のクラシック曲でありながら、さながらテーマソング・専用のBGMのようです。原作の作風のイメージに寄り添うよう、とても練られた選曲である事が伺えます。

 

…でもぶっちゃけ、ポップスカバーするならピアノ協奏曲第2番よりも、交響曲第2番第3楽章の方が、良かったんじゃ…。

 

原作の「のだめカンタービレ」は私の大好きなマンガの一つです。感想などを書いています。よければご一読下さい。

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またもう一つのアニメ主題歌もクラシックカバーとなっており、こちらの記事で紹介しています。

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ちなみに「Sky High」は有名アニメのOPな上シングル曲なのですが、残念ながらベストアルバムには収録されていません。私がゴスペラーズの曲で一番好きな「エスコート」も収録されていません。哀しい…。

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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