クラシックカバーアルバム全曲レビュー

《メメントモリ》キャラクターソングとクラシック

 「Étoile」と《メメントモリ》タイトルソングとの関係について

前のページでは、アモールのラメントについて解説しました。

今回は、なぜか「Étoile」と瓜二つの楽曲である《メメントモリ》オープニングテーマ。この二曲の関連性について考えていきます。


結論から述べると、この二曲は対を成す関係にあり、「Étoile」はアモール編のEDテーマと言えるのではないかと思います。

 

調性の比較

「Étoile」は変ロ短調から始まり、平行調である変ニ長調へ転調します。それにより、憂いのある冒頭から始まり、アモールの気分の高揚に合わせて明るく曲調が変化していくような調性になっています。短調から始まり長調で終わる曲展開は、曲の主体の好転とハッピーエンドを印象付けます。

一方でOPテーマは、終始ニ短調であるため、初めから終わりまで暗い雰囲気を纏っています。「Étoile」の変ニ長調とは、使用する音が大きく異なる上に長調と短調の違いもあるため、正反対のような関係性です。また「Étoile」の変ニ長調よりも半音低い音階の調であるため、より重苦しいメロディになります。

編曲の比較

「Étoile」は、ピアノ・パンフルート・シンセがメインのアレンジで、望郷的・素朴・優しい・明るいといった印象の音色が多いです。一方OPテーマは重厚で重苦しい弦楽器がメインとなっています。

歌詞の比較

二曲の歌詞を見比べてみると、対比関係にあるワードが多く見られます。絶望的なモチーフ希望的なモチーフの対比になっています。

「砂に溺れる」「月夜に浮かび輝く」
「光は遠く」「(光は)遥か彼方に遠くない」・「終わりはきっと 光の中にある」
「夢を見ると砂に溺れ世界を嫌いになる」「幾億の星すべてを 投げ捨てても信じた夢がある」
「消え去る面影」「浮かび輝く宝石ほら瞬いてる」
「風は凪ぐ」「水面は揺れてる」
「何もいらない」「ありのまま生きる」

 

OPテーマの主体は「僕たち」となっており、複数であることがわかります。また、絶望的なモチーフと「君探した」という歌詞から推察すると、「世界に絶望しており、且つまだ主人公に助けに来てもらっていない状況の魔女たち」がOPテーマの主体であると考えられます。つまり、この歌はそれぞれの魔女たちにとっての《メメントモリ》の物語の幕開けの歌であるという事です。

 

そんなOPテーマと同じ曲調にありながら、調性や編曲・歌詞は正反対である「Étoile」。

 

ゲームの時間軸から見てみると、プレイヤーはまず初めにOPテーマを聴く事になります。そして紆余曲折を経ながらゲームを進めていく中で、アモールを仲間にした時点でOPテーマと共通のメロディを擁する「Étoile」を耳にする事になります。

これがどう作用するかというと、曲のドラマ性を高めます。冒頭に奏でたフレーズがまた戻ってくるという流れになり、一度聴いたことがあるメロディが再現されるので、とてもドラマティックに感じます。

 

“冒頭に提示したメロディを、後から再登場させる”という手法は、クラシックによく見られます。ソナタ形式や三部形式など様々な形があります。

私の好きなアーティストであるlove solfegeのこちらの楽曲が解りやすいです。ポップスにクラシックのソナタ形式の手法を取り入れた楽曲。冒頭の重々しいオーケストラのメロディや歌い出しのシリアスな歌メロが、後半に明るく変化して再登場します。

それにより、作品全体の中でドラマティックな流れを作り出すことができます。この「over the surges」では、曲の中で【主人公が苦難を乗り越え、成長し、ハッピーエンドを迎えた】という流れが音楽で表現されている事がよくわかります。

 

以上の事から、アモールに関して言えば、《メメントモリ》OPテーマはアモールにとっての始まりの曲でもあり「Étoile」はアモール編のEDテーマであると言えるのではないでしょうか。ゲーム中にアモール編なんてモノは見当たりせんでしたが

そんなつもりで「Étoile」を聴くと、また一段と感慨深いものがあります。良かったねアモール。

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ABOUT ME
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

POSTED COMMENT

  1. アバター イスカ より:

    初めまして。イスカと申します。X.THE FLOWERの考察大変楽しく拝見しました。

  2. アバター イスカ より:

    初めまして。イスカと申します。X.THE FLOWERの分析、大変楽しく拝見しました。そこで1つ質問なのですが、この楽曲を「ニ短調」と判断したのはどの要素からであるのかご教示いただく事は可能でしょうか。音楽について学び始めたばかりで自己解決できなかった為に質問させていただいた次第です。お時間のよろしい時で構いませんので、よろしくお願い致します。

    • syro syro より:

      コメントありがとうございます!大変励みになります。
      私は基本的に主音の音階をまず聴き取る事から始める事が多いです。

      ペツォールトのメヌエットはト長調で、メロディが一区切りする所の音(主音)がソ(ト)の音になっています。

      X.THE FLOWERの場合はその部分の音階がレ(ニ)なのでニ短調orニ長調と予測できます。あとは他の部分のメロディでどの音階を使用しているかで短調or長調を概ね判断しています。ニ長調の場合はファとドが#、ニ短調の場合はシが♭、といった感じです。

      だいぶ前に書いた記事なのであまり覚えていないのですが、X.THE FLOWERの場合はファ#とド#を多用していたので二長調ではなくニ短調と判断したのではないかと思います。

      ただ私もいかんせん素人なので、間違っている可能性もあります。すみません。

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