クラシックカバーアルバム全曲レビュー

eRa「Classics」

フランスのギタリスト、エリック・レヴィを中心とした、ニューエイジ音楽ユニットeRa(イーラ)のクラシックカバーアルバム第1弾。

 

一言で表現すると、クラシック×造語コーラス×ロックドラムな作品。

2011年リリース。

 

曲目

“青色◎”は特によかった曲。

  1. ◎Caccini + Redemption + Ave Maria(カッチーニ:アヴェマリア)
  2. Vivaldi + Sunset Drive + Spring / Four Seasons(ヴィヴァルディ:「四季」より春)
  3. Verdi + Arising Force + Nabucco(ヴェルディ:ナブッコ)
  4. Verdi + the Chosen Path + la Forza Del Destino(ヴェルディ:運命の力)
  5. Bach + Ritus Pacis + Concerto N3(バッハ:管弦楽組曲第3番)
  6. Malher + Adagieto + 5th Symphony(マーラー:交響曲第5番)
  7. Haendel + Dark Wonders + Sarabande & Ombra Mai Fu(ヘンデル:サラバンド&オンブラマイフ)
  8. Vivaldi + Winds of Hope + Winter / Four Seasons(ヴィヴァルディ:「四季」より冬)
  9. Levi + Sombre Day(セルフカバー)
  10. ◎Barber + Adagio for Strings(サミュエル・バーバー:弦楽のためのアダージョ)
  11. I Believe(オリジナル曲)

 

 

 

 ◎ 1. Caccini + Redemption + Ave Maria(カッチーニ:アヴェマリア)

混声合唱&和音を刻むストリングスの、ザ・ニューエイジといった曲調に、アヴェマリアを歌う男性ヴォーカルが乗っかる曲。

派手なストリングスとドラム&アコギのアレンジは映画音楽のような壮大さとポップさを併せ持っており、ドラマティックな曲展開も合わさり良い出来。

 

◎2. Vivaldi + Sunset Drive + Spring / Four Seasons(ヴィヴァルディ:「四季」より春)

「春」の第2楽章に造語コーラスを重ねながら独自の展開を見せる曲。

もし四季をオラトリオにしたら…といった曲調の前半から、再びバンドサウンドが登場し、ストリングスもクラシカルというよりはポップスのアレンジに変わる。

クオリティはとても高いけど、なんだか早くもマンネリ感が。

 

3. Verdi + Arising Force + Nabucco(ヴェルディ:ナブッコ)

原曲は、歌劇『ナブッコ』の有名な曲である、「ヘブライの捕虜たちの合唱:行け我が思いよ、黄金の翼にのって」。

これも原曲に概ね忠実なアレンジのパートから、徐々にシンセやギター・打楽器などが登場しする。全2曲に比べるとクラシック成分が強い。一旦ニューエイジ風になってから、さりげなく再びクラシカルなアレンジに戻るのがかっこいい。

 

4. ◎Verdi + the Chosen Path + la Forza Del Destino(ヴェルディ:運命の力)

原曲は歌劇『運命の力』の序曲。原曲とは曲構成の順序を入れ替えている。原曲では主題の後に続く旋律の部分からこの曲は始まっており、シリアスでテンポの異なる原曲冒頭の主題部分を中間部に配置している。その後再び元のパートに戻ったり、他の穏やかなパートに移ったりする。

そのため曲の途中で何度も大胆にテンポと曲調が変わる、プログレ的アプローチになっている。

合唱が加わる事でバロック音楽みたいな雰囲気になった『運命の力 序曲』と大胆な曲展開が合わさった、原曲の落ち着きのなさやメロディアスさをさらに強調したようなカバー。結果的にかなり無理やりな曲展開になっているけれど、引き込まれてしまうのは確か。

 

5. Bach + Ritus Pacis + Concerto N3(バッハ:管弦楽組曲第3番)

G線上のアリアのアレンジ。ピチカート音とR&B風ドラムでリズムを刻んでおり、ほぼSweetboxの「Everything’s Gonna Be Alright」状態。これ絶対意識してるだろ…。

 

6. Malher + Adagieto + 5th Symphony(マーラー:交響曲第5番)

第4楽章のアダージェットを再現したパートから、いつものロックドラム&ギター&シンセ&コーラス&男性ヴォーカルのパートに展開していく曲。ロック色強めの、なかなか大胆なアレンジ。

 

7. Haendel + Dark Wonders + Sarabande & Ombra Mai Fu(ヘンデル:サラバンド&オンブラマイフ)

オンブラマイフをサラバンドで挟む構成。やっぱりどちらの曲もヘンデル節で混ぜても違和感ない。

クラシックを聴いていると思ったら、いつの間にかeRaサウンドになっているアレンジはもはや職人技。

 

8. Vivaldi + Winds of Hope + Winter / Four Seasons(ヴィヴァルディ:「四季」より冬)

穏やかな曲調の第2楽章をカバー。まぁいつものアレンジにいつもの曲調。

 

9. Levi + Sombre Day(セルフカバー)

以前にリリースしているオリジナルアルバム『The Mass』収録曲を再録。なんでこの曲?一番売れたのはセルフタイトルのアルバムだし、『The Mass』から収録するなら、タイトル曲がカルミナ・ブラーナのカバーなのに。ちょっと選曲が謎過ぎる。

実際地味なオリジナルのインスト曲で、なんでここに入れた?という感じ。

 

10. ◎Barber + Adagio for Strings(サミュエル・バーバー:弦楽のためのアダージョ)

派手な打楽器を入れた映画音楽風のスリリングなアレンジで前半煽っておいて、中盤からコーラスとエレキギターが登場する場面がかっこいい。地味で掴み所の無い原曲を良い感じにアレンジしている。

3分弱で終わってしまう小曲だけどもっと長尺で聴きたかった。

 

11. I Believe(オリジナル曲)

オリジナルのインスト。オリジナル曲ははっきりいってメロディが弱く、かといってクラシカルでも然程美しいわけでも無くイマイチ。

総評

宗教音楽とニューエイジとロックの雰囲気をそれぞれ良い所取りしたようなクラシックカバー曲集。

原曲に概ね忠実な冒頭から、やがて独自のアレンジに展開していく様は、なかなかドラマティックで楽しいです。一方似たようなアレンジや曲展開が続くため、CD1枚聴くだけでも結構飽きてきます。

クラシックに対して一般人が持っているであろう、「イマイチ盛り上がらずにダラダラ続く」「リズムが無い」「ヴォーカルがいない」といった不満点を解消したような作品。かといって原曲ブレイカーでは決して無く、選曲も渋め。総じておススメできるクラシックアレンジ作品。

ABOUT ME
syro
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。