クラシックカバーアルバム全曲レビュー

Opera Babes「Beyond Imagination」

今回紹介するアルバムは、イギリスのクラシック・クロスオーヴァー・デュオのOpera Babes(オペラ・ベイブス)の1stアルバム、「Beyond Imagination」

メゾソプラノとソプラノの二人の歌手による二重唱に、程よくポップスの風味を取り入れたサウンドが特徴です。

2002年リリース。リンク先で全曲試聴できます。

 

曲目

“青色◎”は特によかった曲。

1. ◎One Fine Day(プッチーニ:「蝶々夫人」より)
2. Sempre Ricordo(グリーグ:ピアノ協奏曲)
3. Theres A Place(ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」より)
4. ◎Beyond Imagination(メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」より)
5. ◎O Fortuna(オルフ:「カルミナ・ブラーナ」より)
6. ◎Lakme H2o(ドリーブ:「ラクメ」より)
7. Ebben Ne Andro Lontana(カタラーニ:「ワリー」より)
8. You Live On In My Heart(映画「ニューシネマパラダイス」より)
9. ◎Chanson Boheme(ビゼー:「カルメン」より)
10. Remember Me(オリジナル曲)
11. Stranger In Paradise(ミュージカル「キスメット」より※だったん人の踊り)
12. ◎Ode II Joy(ベートーヴェン:交響曲第9番)
13. 1001 Nights(チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より)
14. Barcarolle(オッフェンバック:「ホフマン物語」より)
15. Lakme(VibeTribe Mix)
16. Vittoria! (Aida 2002)(ヴェルディ:「アイーダ」より)

 

1. ◎One Fine Day(プッチーニ:「蝶々夫人」より)


和楽器を前面に出した、壮大な「ある晴れた日に」のカバー。なんでこんな斬新なアレンジ??と思ったら、そういえば蝶々夫人は日本の芸者の話だった。

かなりガチの和楽器アレンジにストリングス&オペラ二重唱が絡む。これはかっこいい。初めからクライマックス。

 

2. Sempre Ricordo(グリーグ:ピアノ協奏曲)

あのティンパニ連打からのドラマティックなピアノが鳴り響く、出オチ感の強いグリーグのピアノ協奏曲…のなんと第2楽章のカバー。珍しい!

原曲の雰囲気を尊重した、シンプルでクラシカルなカバー。でもやはり地味。

 

3. Theres A Place(ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」より)

第2楽章のカバー。徐々にストリングスやピアノが盛り上げていき、一通りメロディを再現した後、ニューエイジ風の打ち込みリズムが登場し2番へ。

 

4. ◎Beyond Imagination(メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」より)

ダンスミュージック風のアレンジが強い曲。ポップスアレンジのピアノとオーケストラとの掛け合いが派手。この曲調でクラリネットが目立っているのも面白い。何よりエレキベースが存在感が凄い上超かっこいい。この曲調にクラリネットとエレキベースを混ぜるか普通??

 

5. ◎O Fortuna(オルフ:「カルミナ・ブラーナ」より)

「おお、運命の女神よ」にオペラ二重唱をオリジナルの対旋律として加え、打楽器を始め更にアレンジを派手にした曲。骨太のドラムと管楽器がいい感じ。原曲の派手さを更に倍増させたような曲。

 

6. ◎Lakme H2o(ドリーブ:「ラクメ」より)

もちろんカバーする「花の二重唱」。ハープやシンセ、水の音などを加えたヒーリング風味のアレンジ。きれいな音をたくさん加えた味付けが程よくポップ。このアレンジにするならオペラ歌唱で歌い上げずにあっさりした歌唱でも…という気はするけど。坂本真綾とかに任せたいカバー。

 

7. Ebben Ne Andro Lontana(カタラーニ:「ワリー」より)

「さようなら、ふるさとの家よ」をシンプルにカバー。二人で歌うので迫力も2倍。単独のアリアよりも聴いていて楽しい。

 

8. You Live On In My Heart(映画「ニューシネマパラダイス」より)

ピアノ&ストリングスにクラシックギターを加えた穏やかなアレンジの曲。突然曲調が変わりドラマティックに展開する間奏が聴きどころ。

 

9. ◎Chanson Boheme(ビゼー:「カルメン」より)

有名曲が並ぶ『カルメン』から、よりによって「ジプシーの歌」をカバー。選曲が渋い。ツインヴォーカルを活かすためなのか、選曲がなんか独特。程よく派手になりラテン感も増強したアレンジは、やはり良い感じ。だんだんテンポが速くなっていく展開も再現。

 

10. Remember Me(オリジナル曲)

ベタなニューエイジ風ポップスにオペラ歌唱を混ぜた曲。オーケストラが盛り上げる後半の展開はメロディアスでドラマティック。

 

11. Stranger In Paradise(ミュージカル「キスメット」より※だったん人の踊り)

原曲は、ボロディンの「だったん人の踊り」のメロディーを引用したミュージカル曲。「だったん人の踊り」の有名なメロディーを少しアレンジしながら繰り返す構成。

 

12. ◎Ode II Joy(ベートーヴェン:交響曲第9番)

マーチングスネアと管楽器を中心に、徐々に盛り上げていくニューエイジ風ポップスアレンジ。ラストでようやく合唱が登場しクライマックスを迎える。なかなか斬新な第九。

 

13. 1001 Nights(チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より)

数多くの有名な曲を擁する『くるみ割り人形』から、よりによって「アラビアの踊り」をカバー。選曲が渋いんじゃ!!

でも思い返してみれば、1曲目は和風から始まり、イタリアやロシアを経て今度は中東。バリエーション豊か。

 

14. Barcarolle(オッフェンバック:「ホフマン物語」より)

舟歌をシンプルなアレンジでカバーする、実質フィナーレの小曲。

 

15. Lakme(VibeTribe Mix)

6曲目のリミックス。R&B×EDMなアレンジ。なかなか斬新でアレンジのクオリティも割と高い。

 

16. Vittoria! (Aida 2002)(ヴェルディ:「アイーダ」より)

サッカーで有名な凱旋行進曲のニューエイジ風カバー。

 

 

総評

ともすれば似たような曲ばかりになってしまうクラシカル・クロスオーヴァー作品を、和風の曲やラテン調の曲・中東風の曲などを交えながら、時にはシンプルに、時には派手なアレンジで。時にはベタな曲を、時にはマニアックな曲を。

そして曲の初めはシンプルに始まり、徐々にオリジナリティを加えながら盛り上げていく曲展開。

作品全体を通して飽きずに聴かせる工夫が随所に見られます。

ヴォーカルがオペラ二重唱一辺倒なのがやや食傷気味ですが、それ自体は他に類を見ないスタイルなので、個性でもあります。

 

ちなみに2ndアルバム「ルネッサンス」は、アレンジはより洗練された一方で、スタンダードなクラシック・アリア風の曲も増えています。

 

2ndアルバム収録曲を、こちらの記事で紹介しています。この曲は凄いぞ。

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ABOUT ME
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。