複数曲を引用した曲

トッカータとフーガ・オペラ座の怪人/MALICE MIZER「聖なる時 永遠の祈り」

Gacktがソロデビュー前に所属していたバンドとして有名なMALICE MIZER(マリスミゼル)

そんなMALICE MIZERがGackt脱退後にリリースしたアルバム《薔薇の聖堂》の中の一曲「聖なる時 永遠の祈り」で、バッハの「トッカータとフーガ 二短調」とウェバーの「オペラ座の怪人」を引用しています。

2000年リリース。

MALICE MIZER(マリスミゼル)と「薔薇の聖堂」

MALICE MIZERは1992年~2001年にかけて活動したバンドで、2度のヴォーカル交代をしながら、4枚のオリジナルアルバムを制作しました。

練り上げられた世界観とインパクトの強い楽曲、奇抜な衣装で「濃いめの」ヴィジュアル系バンドとしてカルト的な人気がありました。

有名なのは2代目ヴォーカルGackt在籍時のタンゴ風マイナーソング「月下の夜想曲」やネオクラ風V系ロックの「ヴェル・エール」辺りです。

 

そしてGacktが脱退した後リリースしたアルバムが、結果的にラストアルバムとなってしまった「薔薇の聖堂」になります。

それまではストリングスなどを積極的に導入したり個性的ではありつつも「ザ・ヴィジュアル系ロック」といった感じの楽曲をリリースしていたMALICE MIZERですが、この「薔薇の聖堂」は、それまでの路線とは大きく異なり“宗教音楽”色を強く前面に押し出した作品です。

 

アルバム全体を通してオルガンやチェンバロ、混声合唱やアリアなどをメインに据えています。またイントロ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビのような一般的なポップスの様式を無視した展開の曲が並んでいます。50分程度のアルバムですが、半分以上が楽器のみのパートです。

「アルバム全体を通して一つの作品」という雰囲気も強く、「暗く」「厳か」な空気が作品全体を支配しています。さながら“現代版レクイエム風オラトリオ”といった感じのアルバムです。ガチです。宗教音楽的和声をこれでもかという程に堪能できます。

 

一見似たような雰囲気の曲が並んでいますが、実際はテクノを取り入れた「虚無の中での遊戯」や女性オペラ歌手がメインの「地下水脈の迷路」、ブラック/アバンギャルドメタルな「破戒の果て」など多彩な曲揃いです。

そしてアルバムラストに一番の山場を持ってくる構成。最後に最もヴォーカルをフィーチャーしている歌モノの「白い肌に狂う愛と悲しみの輪舞曲」と、ドラマティックなインストシングル曲「再会の血と薔薇」が流れて幕を閉じます。

3代目ヴォーカルのklahaは、はっきり言って「エセGackt」といった感じで微妙ですが、そんなヴォーカルを補って余りあるクラシカルな魅力がこの作品にはあります。

 

聖なる時 永遠の祈り

そんなアルバム《薔薇の聖堂》の短いインストの後の2曲目、実質的な序曲にあたるのが、今回紹介する「聖なる時 永遠の祈り」です。

アルバムの中でも最も長い8分超の曲です。

オルガン&打楽器&混声合唱による壮大な2分半に渡るイントロの後に、「オペラ座の怪人」を引用したデュエットパートが始まります。

「オペラ座の怪人」の原曲はこちら。有名な主題をデュエットで歌い上げます。

そして曲の中盤(4分25秒辺り~)に「トッカータとフーガ ニ短調」を引用したストリングスパートが登場します。

 

「トッカータとフーガ」は、3分程度の「トッカータ」の後に7分程度の「フーガ」を演奏します。前半のトッカータ部分があの超有名な部分です。

 

 

「聖なる時 永遠の祈り」で引用しているのはコチラ。後半のフーガの方。冒頭のメロディです。

 

「聖なる時 永遠の祈り」は、他の部分も何らかのクラシック曲を引用していそうな雰囲気があります。元ネタを探しながら何度も聴きたくなる、奥深いクラシカルな名曲です。

 

 

 

ABOUT ME
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。