クラシックカバーアルバム全曲レビュー

SYMPHOBIA(シンフォビア)「Noc-Turn」

SweetboxのサウンドプロデューサーであるGEOが2014年に結成した音楽ユニット、SYMPHOBIA(シンフォビア)の1stアルバム、Noc-Turn(ノクターン)。

 

 2015年リリース。

 

曲目

青色◎は特によかった曲。

1. We Are (feat. Daniel Dice)<ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」>
2. I Do I Do<チャイコフスキー「白鳥の湖」>
3. Rachmaninov<ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番>
4. Brand New Day<グリーグ ペール・ギュントより「朝」>
5. ◎Hungry<ベートーヴェン ピアノ協奏曲5番「皇帝」第2楽章>
6. ◎Total Eclipse (feat. Daniel Dice)<バッハ 「トッカータとフーガ」>
7. I Need Air<バッハ 「G線上のアリア」>
8. Play<ショパン 「ノクターン」>
9. What’s Done Is Done (feat. Jade & Marinoux)
10. Trigger<チャイコフスキー「くるみ割り人形」>
11. SupahFreakinMarvelous<モーツァルト 魔笛より「夜の女王のアリア」>
12. Prove Me
13. Victory (feat. Jade)<バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」>
14. Still Standing (feat. Marinoux)<ガブリエル・フォーレ「パヴァーヌ」>

 

1. We Are (feat. Daniel Dice)<ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」>

男性ヴォーカルをフィーチャーした曲。SYMPHOBIAのヴォーカルであるアディーシャはラップがメイン。

ラップ部分や間奏では”運命”をサンプリングしたトラックでシリアスさを見せるが、フックでは”運命”は引用せずに、ゲストヴォーカルが今風のオートチューン的エフェクトで穏やかに歌う。1曲丸ごと”運命”をサンプリングすると重たくなってしまうとはいえ、このフックはちょっと…。なんだか悪い意味でイマドキになっちゃったような。

 

2. ◎I Do I Do<チャイコフスキー「白鳥の湖」>

“四羽の白鳥の踊り”をたっぷりサンプリングした曲。ダブステップを取り入れている。アディーシャはフック以外はラップメイン。歌唱・ラップともにクセがなく普通に上手い。Sweetboxのヴォーカルよりも硬派で、鼻につく感じも無い。

EDMサウンドとオーケストラサウンドが交互に前に出る曲展開が面白い。EDMとティンパニが同居するサウンドも新鮮。これは良い意味でイマドキ!

サンプリング部分の続きのパートをオーケストラメインでじっくり再現する間奏もカッコいいい。

 

3. ◎Rachmaninov<ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番>

オートチューン⇒ダブステップと来て、今度はトラップ。

派手で手数の多いトラップサウンドとクラシカルな速弾きピアノアルペジオがとてもいい感じに混ざり合っている。

主に”ピアノ協奏曲第2番 第1楽章”序盤の部分を引用しているわけだけど、原曲では、ゆっくりめのオーケストラのバックでピアノがアルペジオを引き倒している。そんな「ゆったりテンポのバックでピアノが高速で鳴りまくってる」シチュエーションを、「ゆったりテンポ&高速ドラム高速エフェクト」のトラップサウンドに重ね合わせており、まさしくクラシック原曲の要素を今風のサウンドに落とし込んでいる。

そして案外ポップスに昇華するのが難しいラフマニノフを見事にポップにしている。ステキ。名曲。

 

4. ◎Brand New Day<グリーグ ペール・ギュントより「朝」>

民族音楽風の打楽器を混ぜたR&B曲。そんな大陸風味の打楽器と”朝”のメロディが合わさる事で、とても壮大な雰囲気を作り出している。

ラップパートからフックで一気に視界が広がるようなアレンジも、原曲のメロディ展開をしっかりと活かしている。原曲の6/8拍子を4/4拍子に変更している点も、間延びしているというよりはタメが出来る事で壮大感を演出するのに一役買っている。

 

5. ◎Hungry<ベートーヴェン ピアノ協奏曲5番「皇帝」第2楽章>

有名な第1楽章ではなく第2楽章の方を使用。そして今度はカントリーロック×EDM×クラシック。クラシック成分は薄めで、ギターリフと歌メロをしっかりと聴かせる曲。メロディが良い上にアレンジも斬新で良い出来。

 

6. ◎Total Eclipse (feat. Daniel Dice)<バッハ 「トッカータとフーガ」>

1曲目と同じゲストヴォーカル。映画音楽的な派手さとEDMの派手さを合わせたアレンジは聴いていて楽しい。

ちなみに引用しているのは冒頭の「鼻から牛乳~」のトッカータ部分ではなく、後半のフーガのパート。

 

7. I Need Air<バッハ 「G線上のアリア」>

Sweetbox,ETERNTY∞でも何度もサンプリングされたG線上のアリア。よっぽど好きなのだろうか。それとも2匹目のドジョウを狙っているのだろうか。他の曲と比べると過去の曲と全然変わり映えしないアレンジもちょっと。さすがに食傷。

 

8. Play<ショパン 「ノクターン」>

ノクターンを申し訳程度に登場させるも、ほとんどはマーチング×EDMのオリジナルなアレンジ。リズムもメロディも単調。マーチング&EDMだからそんなもんかもしれないけど。

 

9. What’s Done Is Done (feat. Jade & Marinoux)

Sweetboxのヴォーカル、ジェイドをフィーチャーしたオリジナル曲。Sweetbox及びジェイドのファンからすれば嬉しいのかもしれないけれど、個人的には正直せっかく新しいサウンド&ヴォーカルに一新していたのに…。という印象。 アレンジもジェイドに引っ張られたのかやや昔に遡ってしまった感じ。

 

10. Trigger<チャイコフスキー「くるみ割り人形」>

特に有名な「マーチ」「花のワルツ」などではなく「金平糖の精の踊り」をサンプリング。

この「金平糖の精の踊り」、当時は珍しいチェレスタを使用していたのだけれど、今聴くとダニーエルフマン的なシアトリカルさがあり、まったく古臭さを感じない。原題の「ドラジェの精の踊り」も、昔は日本人にドラジェが浸透していないために金平糖と訳されたけれど、最近は日本でドラジェを見かける事も増えた。そんな現代のために作られたかのような「金平糖の精の踊り」をGEOの最新アルバムで引用するというのも何というか味がある。

 

11. SupahFreakinMarvelous<モーツァルト 魔笛より「夜の女王のアリア」>

クイーンの「We Will Rock You」のようなリズムにラフなロックギターリフ。そして「夜の女王のアリア」ということで、クイーン×オペラのような雰囲気になっている曲。歌詞も似たような感じ。

ちなみにブックレットの歌詞和訳で「スーパーフリーキンマーヴェラスになるわ」とか書いてある。それは和訳とは言わない。

 

12. Prove Me

オリジナル曲。ストリングス×高速ラップ×EDM。

 

13. Victory (feat. Jade)<バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」>

再びジェイドをフィーチャーした曲。アレンジもSweetboxの曲みたいな雰囲気。EDMばかりでも飽きてくるのでこういった曲もあって良いのかな?でもSweetboxを散々聞いてきた身としては、もうこういうのはちょっと…。

 

14. Still Standing (feat. Marinoux)<ガブリエル・フォーレ「パヴァーヌ」>

金管楽器やシンセも登場し派手にパヴァーヌのメロディを繰り返すR&B曲。

ボーナストラックというわけでも無いのだけれど、全くラスト感の無い不思議なラストトラック。

 

総評

EDM×ヒップホップ×クラシックをメインコンセプトに、Sweetboxよりもアップデートされたサウンドにラップ多めの女性ヴォーカルが乗っかったアルバム。

後半は変わり映えしない曲調や今更感のあるSweetbox風の曲等が並びますが、曲ごとに変化を付けようとする気概は伝わります。音も凝ってます。

Sweetbox系を今聴くなら、現時点で最新版な音で作られた当アルバムで良いのではないでしょうか。過去作品に全く引けを取らない最新作。「Sweetboxはもう聞き飽きた…。」な人にもおススメ。

 

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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

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