クラシックカバーアルバム全曲レビュー

Roses Epicurian「闇童話工房」

今回紹介するのは同人ユニットRoses Epicurianが2008年にリリースした自主製作CD「闇童話工房」

同人音楽界では有名な歌手の葉月ゆらがヴォーカルで、ボーカロイドや同人音楽で作曲活動をしているキラ星ひかるが作編曲を担当。

 

以下のリンクは公式サイトの紹介ページ及び試聴ページです。残念ながら現在作品を入手するためには駿河屋などの中古ショップを利用するしかありません

http://hatukiyura.sakura.ne.jp/circle/index.html

http://hatukiyura.sakura.ne.jp/circle/data/yami_cross.mp3

 

曲目

“青色◎”は特によかった曲。

1. Nightmare(中国の童謡『十只兎子(10匹のうさぎ)』)

2. Bathory(バッハ:小フーガ ト短調)

3.◎Darkness(ブラームス:ハンガリー舞曲第5番)

4.聖女(ジャゾット:アルビノーニのアダージョ)

5.Black Swan(チャイコフスキー:『白鳥の湖』より情景)

6.Dark Side Conclave(ベートーヴェン:月光 第1楽章)

7.夜の子供たち(中国の童謡『十只兎子(10匹のうさぎ)』)

 

 

1. Nightmare(中国の童謡『十只兎子(10匹のうさぎ)』)

ミステリアス&ファンタジーな1分程度のインスト。

 

2. Bathory(バッハ:小フーガ ト短調)

オルガン・ピアノ・シンセベース・シンセドラム他様々なシンセ音源で彩られたクラシカルなマイナー打ち込みポップス。ドラムのリズムがトランス風。ヴォーカルは癖のないシンプルなアニソン風女性シンガー。

オリジナルの歌メロのバックで、シンセオルガンで小フーガを引用した旋律やクラシカルな旋律が演奏される。

 

3. ◎Darkness(ブラームス:ハンガリー舞曲第5番)

原曲のマイナーでドラマティックな雰囲気に、更にシアトリカルさとアニソン風のスピード感や転調を加えて、ダーク&ゴシック&マイナー&ハイスピード、とこの手の音が好きな人のツボを完璧に抑えた曲。原曲とオリジナルの配合バランスもちょうど良く、しかも原曲の中間部もしっかり引用している。

クラシック×同人音楽としては至高の一曲。安っぽい音源も逆に雰囲気が出ている。私も大好きな曲。

 

4.聖女(ジャゾット:アルビノーニのアダージョ)

スローテンポのマイナーバラード。のわりにティンパニやシンバルがやたら騒いでいる。教会や修道院をイメージした曲なのでは…。原曲同様ストリングスをフィーチャーしたら良いのに。そういえばさっきから弦楽器があんまり出てこない。作曲者が苦手なのだろうか。

ウルトラ暗い曲を引用している割にはオリジナルのメロディはどちらかというとロマンチック。楽器選定も含めてややちぐはぐな印象を受ける曲。

 

5. ◎Black Swan(チャイコフスキー:『白鳥の湖』より情景)

イントロから主張しまくっているシンセドラムと謎のシンセ音源(木管楽器群?ストリングス?)が強いインパクトを与えるアニソン風クラシカルトランス曲。

情景のメロディから始まりオリジナルのメロディに展開していく歌メロがいい感じ。サビもエモーショナル。

 

6. Dark Side Conclave(ベートーヴェン:月光 第1楽章)

思いっきりシアトリカルに振り切った、2声部のヴォーカルが掛け合う3拍子曲。音源のチープさも含めてFF6のオペラ劇場の曲みたい。月光のパートが浮いているけれど、意図的な演出と思われる。

 

7.◎夜の子供たち(中国の童謡『十只兎子(10匹のうさぎ)』)

1曲目にヴォーカルを付けた小曲。とてもクラシカルで美しいメロディ。

 

総評

正直かなり安っぽいDTM音源や微妙な音質はメジャー作品と比べるとかなり聞き苦しい面もありますが、アニソン/ゲーソン風打ち込み歌ものポップス×クラシック、という事で貴重な一枚。曲自体はこの手のジャンルが好きな人なら十分満足できる出来です。

選曲も聴き手のツボを押さえている流石のラインナップ。

サウンドの方向性や雰囲気としてはQueen of wandに近いです。もしQoWがクラシック曲をそのまま使用したらこんな感じ、という作風。ALI PROJECT好きにもおススメ。

ABOUT ME
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syro:生まれも育ちも長崎市です。二児の子育て中。 趣味はインドア全般。音楽以外ではスマホ収集とトライエースと三島由紀夫と遠藤周作が特に好きです。 好きな作曲家はメンデルスゾーンと葉山拓亮。

POSTED COMMENT

  1. アバター みみみ より:

    CDを購入して聖女を聴いてから、原曲はなんだろうとずっと思っていました。これじゃないかなというのもありましたが確信が持てず…。なのでやっとスッキリしました!

    • syro syro より:

      ありがとうございます!そのお言葉、このサイト冥利に尽きるこの上ない幸せでございます。原曲が記載されていないカバー作品も多く、いつも謎解きをするような気持ちで聴いています!

  2. アバター Rosemarry より:

    『夜の子供たち』ですが、これは中国の童謡『十只兎子』(10匹のうさぎ)の引用ですね

    原曲はうさぎに喩えて略奪愛による殺人を歌った曲、または聴いた者を死へと誘う曲といわれ、中国では恐怖童謡として知られています

    メロディも歌詞もとても洗練されていて美しい曲ですので、機会があれば是非解説とともに聴いていただきたいものです

    • syro syro より:

      コメントありがとうございます!全く知らない曲でした。とてもクラシカルで雰囲気あり、良い曲です。貴重な情報ありがとうございました!

  3. アバター Rosemarry より:

    聴いていただきありがとうございます。

    現在、中国のサイトにある十只兎子の歌ってみた動画や解説動画のほとんどは、『Nightmare(夜の子供たち)』が「十只兎子のカラオケ版」として逆引用されたものです。(この美しいメロディ自体は童謡本来のものです)

    それ自体はあまり好ましいこととは思いませんが、それほど魅力的な編曲なのだといえるのでしょうね。

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